Dec 15, 2013

Ryukyu

先日購入した沖縄の器は
白化粧のみの6寸皿である。




しかまファインアーツにて開催されていた
「琉球 松田米司作陶展 」 で出会ったもの。

今回の作陶展は沖縄の伝統的な技法と
かたちのものを制作されたとのことで
この6寸皿も19世紀の壺屋焼を再現したものだそう。
 
 
 

静かな佇まいであるからこそ、 
その力強さと繊細さがすっと入ってきて、 
ご本人の言葉にあるように沖縄のこころが
かたちに現れたとても美しい器だと思う。
 
 
 


手に取って眺めていると、いつの間にか
前のめりになっていることに気づく。
 
嬉々として器を眺めるのは毎度の事であるが、
この器の場合は頭も心もカラッポになって
ただただ吸い込まれるように見ている。
 
ひとつの色のはずなのに
たくさんの色が見えてくる、
そんな引力のある器なのです。
 
 
 
 

Nov 24, 2013

Mixed nuts

購入する言い訳の一つに
「使う場面が浮かぶ」というのがある。

服ならば手持ちの物にとても合うだとか、
調味料なら料理の味が想像できるとか。


この小皿を見た時に何故だか
ミックスナッツを載せた図が
でーんと浮かんだ。
 
チョコレートでもなく、チーズでもなく、
ミックスナッツ、である。
 

 



というわけで、老松と桶取の
演目が描かれた小皿は我が家に
いらっしゃる事となった。


実行に移してみるとミックスナッツとの
相性は予想以上で、ついつい手が伸びて
お酒も進む。
 
 

どこかコミカルにも見えてしまう登場人物、
彼らを眺めながら物語を勝手に創作するのも、
更にお酒を美味しくする手なのです。
 
 

Nov 10, 2013

Monsieur Hulot

衣替えをする。

夏前に収納した上着をまたひっぱり出す。

少しの休みしかなかったけれど、 
再びよろしくお願いしますと声をかけながら。
 




この Johanna Gullichsen の上着は、
かれこれ15年近く着ているけれど、
驚くほどに生地がへたれていない。
 

ソファの張り地や鞄にも使用されているので
当然といえば当然ではあるが、
決して優しくはなかった扱いを考えると
感心せずにはいられない。
 
 
 
こうやって吊り下げていると、
ジャック・タチ演じるユロ叔父さんが
着ていそうに見えて楽しいので、
いつもこの掛け方になってしまう。
 

存在感があるだけに、昔はこの上着に
合わせて服を選んでいたけど、
今はそんな事を考えなくてもなんとなく
サマになってきた(ような気がする)ので、
なんだかそれが少し嬉しいのです。
 
 

Oct 14, 2013

104

1972年に発行された「世界の民芸」は
浜田庄司、芹沢銈介、外村吉之介の3氏が
週刊朝日誌上において、手持ちの海外民芸品
(時には感心した柳宗理など友人の収集品も)を
それぞれが選び、解説した104点を一冊に
まとめたものである。




選ばれた民芸品の素晴らしさは勿論、その解説文から
3氏それぞれの価値観や物に対する愛情、 
人柄も感じ取れる気がして、ページをめくっては
感嘆したり、共感したりと毎回見る度いそがしい。
たとえば芹沢銈介が選んだイランのソックス


この解説の一文には
「試しにはいてみると足先がすっぽり模様に
つつまれるたのしさ、
その感触と暖かさは、ただ材質からだけでの
ものでない格別なものがある。」
というあたたかい言葉が添えられている。
104点の様々な国の様々なもの、
迫力ある写真を見ながらそれぞれの国に
思いを馳せるだけでもとても楽しい。
また芹沢銈介の装幀も素晴らしく、
表紙を外した姿も美しいのが
ものに対する著者たちの
姿勢のようにも思える。

繰り返し読んでいるあとがき
 「物を見ること持つこと」
には大切な言葉や考えが沢山詰まっていて、
自分にとっては地図のような存在。
なので、この「世界の民芸」は
いつでも手に取れる場所にある
無くてはならない本なのです。

Sep 27, 2013

Tipei 03


台北の眺めはおもしろい。


ある通りには、懐かしいような見たことのあるような、
そんな賑やかな光景があり。








ある通りには新しいと古いがごっちゃになってて、
まるで映画で見たような風景がある。




街路樹は躍動感のある佇まいで、
今にも動き出しそうに見える。




そんな街の裏通りには、外の喧騒から切り取られたような
心地よい茶藝店がある。




そこでは美しい皿や茶葉入れに出会い、




郊外の陶器街では鮮やかな茶器にも出会えた。




いろんな表情を持つのは街も器も同じ。


台北の眺めはおもしろい。


Sep 7, 2013

Taipei 02

台北に行ったらスタンドカラーがまた増えてしまった。

台湾通の友人に鄭惠中さんのアトリエを教えて
もらっていたので、それは当然の結果とも言える。



狭い路地に面した鄭惠中さんのアトリエは
間口に比べて奥行のある、京町屋のような建物。
案内された2階と3階は、書庫のように棚が並び、
そこにサイズごとに分けられた服が、所狭しと
置かれている。
最初はその物量に圧倒されたが、次にそれらが
全て違う色であることに気付いて一層驚く。


まるでグラデーション見本のような色の種類、
更にサイズも加わると選択肢はかなり拡がってしまうが、
その中から好みのものを探し出す作業がこれまた楽しい。
 
広げて、着て、眺めて、また広げてを繰り返し、
今回は2枚のシャツと布を持って帰ってきた。


その着心地は軽くてとても肌触りが良い。
ゆとりのあるシルエットも風が通り易く、
湿度の高いこの土地の気候に適している。
また素材が柔らかいので羽織るにも、
重ねるにもおさまりが良いので、とにかく
着ていて心地が良い。

持ち帰った2着が既に手放せないものと
なった今、次回はあの型をあの色でと、
早くも予習に余念がありません。

Aug 26, 2013

Taipei 01

関西空港7時発のピーチ航空。
ご来光を拝んでから徒歩にて搭乗、
現地時間9時前には桃園空港に 
到着していた。
 
 

8月の台北は晴れていたかと思えば
突然暗雲が立ち込め、ひとしきり強く
降った後また晴れるというせわしない
空模様。




湿度は高かったが酷暑の日本よりも
気温は低く、おかげで雨宿りを理由に
バラエティに富んだ軽食を食べ歩くこを
存分に楽しめた。
 
 
その一部をここに。

有名店 鼎泰豊の小籠包
行列必至
 
 
 
 豊盛食堂にて鶏肉のロースト&野菜の炒め物
(画像は無いが、 煎板條という春巻も美味)
 
 
 蜀辣の海鮮火鍋

 
 
莫名福州乾拌麵の乾伴麺
上にのっているのはラー油
葱油伴飯も絶品
 
 
振り返って画像を見ると気持ちが先走って
記録していないものも多い。
 
 
台北を再訪する良い理由が早速出来てしまいました。
 
 
 
 
 

Jul 30, 2013

tiny 10

夏。

何をしていても、何もしなくても
この暑さからは逃れられそうにもないので、
眼にてしばしの避暑を。
 

金魚の姿をした陶器製の浮き玉。

水に浮かべると、ぷかりぷかりと
風に身を任せる。
 
 
 
 


美しい模様が描かれた胴体と
トボけた表情のアンバランスさも
どこか力が抜けていて涼しげである。
 
 
毎年狭い睡蓮鉢で申し訳ないのですが、
夏空の下、水面を漂うその姿を
眺めつつビールをいただくと、
少しだけ暑さを忘れる事が出来るのです。
 
 
 

Jul 12, 2013

On the Road

ジャケ買い、ならぬ文字買い。

文字の線幅やカーブが少し変化するだけで
言葉のイメージを大きく変えてしまう
フォントデザインやタイポグラフィの世界は
奥が深くてとてもとても面白い。



『A TWO PIPE PROBLEM LETTERPRESS』の作品は、
主宰するステファン・ケニー氏が収集してきた 
1800年代から1900年代のヴィンテージ・ウッドタイプを
それぞれ組合せて配置し、それを旧型のプレス機で
印刷したもので、ウッドタイプの雰囲気と選ばれた
葉たちのバランスがとても心地よい。


たまたま遭遇した個展で一番印象的だったのが、
ジャック・ケルアックの小説『On the Road』の一文。




それぞれのフォントと余白のバランス、
『☞』の絶妙な配置!)
ウッドタイプならではの不均一な質感が
アメリカ大陸を転々とする物語と共鳴して
いるような気がして、部屋で眺めていると
何処かへ誘う標識のようにも見える。



この一文の続きは

“There was nowhere to go but everywhere, 

so just keep on rolling under the stars.”


(Jack Kerouac, On the Road, 1957)



久しぶりに小説を引っ張り出して、
しばし大陸横断の旅に出かけたいと思います。




Jun 26, 2013

white mustache

視線を感じて振り返ると赤い服の小さな老紳士と目があった。




挨拶がてら手に取って紳士の足元に目をやると、 
なにやら風変わりな装い。

さりげなく栓抜きがコーディネートされた足元は、
硬い材質ゆえ少々歩きづらそうではあるものの、 
その立ち姿はピンと背筋が伸びていらっしゃる。


お互い赤色好きという事もあり、紳士には
我が家へお越しいただく結果となった。

用意した瓶ビールでご自慢の技を披露してもらうと、
テコの原理も作用してそれはそれはスムーズ。

唯一の問題は開けるべき栓があまり無いことだが、
それについては黙っておこうと思っている。


70年代にアメリカのIDEAL社から日本にやってきたという老紳士。

実は長い旅路の中で立派な白髭を何処かに忘れてきた
とのことだったので、こちらで勝手に(ポワロ風に)
あつらえさせていただいた。

 
新しい白髭、気に入ってもらえたら良いのですが…。
 
 
 
 

Jun 9, 2013

a basket

オレンジ色した市場籠がある。





沖縄のブランドYOKANGがfennicaのモチーフである
ツバメをスプレーしたもので、年中持ち歩いているが、
この季節になると出番が増える。


荷物が多く、しかも形を崩したくないものを
持ち歩く時にはこれに限る。
それは野菜、果物、卵や肉と色んな形状と
素材のものを受け容れてきた市場籠ならでは
の許容範囲の広さだと思う。


しかも屋内では本やCD、布モノ等々の収納籠
という役割もこなし、とにかくとても頼りになる。


加えて、これを持っていると色んな人に
話し掛けられるというエピソードもついてくる。


百貨店や信号待ち、電車内で声をかけられる度
中をまじまじと覗き込まれると、気恥ずかしくもあり
少し誇らしくもあるのです。


May 30, 2013

ninjin kinatetsu

明治時代のワインボトル。





どっしりとした胴回りに比べて、最後の最後で
チカラが抜けてしまたような、そんな首元の
よろけ具合がなんとも愛らしい。


首元は少々くだけているが、ラベルは西洋風の
モダンなデザイン。 
葡萄房のイラストと共に中央に配された商品名と
おぼしき横文字を眺めるとそこには
  NINJIN KINATETSU 』 という文字が。





ニンジン、キナテツ。



このニンジンキナテツの謎を解明すべく、 
よろけた瓶を上下左右から近づいたり
離したりしつつじっくり取り調べたところ、
色の抜けたラベルに薄っすらと残った朱色で
『鐡那規参人』の文字を発見

右横書を左横書きに並べ替えると
『人参規那鐡』(ニンジンキナテツ)と読める。

嬉々としてこれをネットで調べたところ、明治時代に
人参規那鐡葡萄酒なるものがあった事が判明
以下MIHOミュージアムのページより。

『明治四十年代には、「人参規那葡萄酒」ないし
「規那鉄葡萄酒」と呼ばれる薬用酒が流行した。
これは滋養強壮の目的のものであり、この「人参」とは
朝鮮人参、「規那」とはアカネ科の常緑高木キナの樹皮
から採れる「キニーネ」、そして「鉄」とは貧血に効くという
鉄分を指している。』

は思いの外あっさりと解けた。


ニンジンキナテツ騒動も無事解決したところで、
出自の判明したご本人に目をやると、
何をそんなに騒いでいるのかと小首を傾げて
こちらを見ていらっしゃいました。


May 6, 2013

SAMIRO YUNOKI


新しい場所に見慣れたものがあると安心する。
それはハンバーガーやコーヒーショップチェーンの
看板を異国の地で見かけるとほんの少し落ち着くのと
なんとなく似ている。



柚木沙弥郎さんの型染めを部屋に掛けた。
するとたちまちそこがいつもの空間となり、
なんだかとてもほっとする。






手に馴染んだブレスレットや
身体に馴染んだ服、
好きな香りがあると落ち着くように、
この型染めは自分の居場所を
教えてくれる地図のようなもの。


あまり多くを語らない彼らですが、
その飄々とした表情が
時にはとても頼りになるのです。



Apr 21, 2013

umanome

この渦巻きを馬の目と呼ぶなんて、
名付けた人はセンスがある。


本来は馬の目を描いたものでは無いそうだが、
言われてみると確かに馬の目に見えてくるから
不思議だ。





模様や色の呼称は知れば知るほど
本当に面白い。


この馬の目皿は明治辺りのものだそうで、
高台は無くべた底。なので底に厚みがあり、
小皿だけれども重みがある。


くるくると流れるように描かれた馬の目模様は、
描いた職人さんのリズムにのった筆使いまでも
見えるようで、思わずなぞってしまうのです。


Apr 4, 2013

nereus

JOHANNA GLLICHSENの生地を
ソファに張ってもらった。

長年思い描いていたので、
完成してとても嬉しい。




今回の生地の名前はnereus。
ギリシャ神話の海神の名前だそうで、
その名にちなんだ同名の小惑星も
存在するらしく、なんとも壮大。


JOHANNA GLLICHSENのものに関しては、
初めて目にして以来少しずつ少しずつ
集めてきたので、今は毎日どこかしらで
目にする事が出来る。

驚くべきなのは、こんなに日々目にしているのに、
いつ見ても新鮮に映るということ。

そのパターンや配色は見る度に驚きがあり、
毎回新たな気持ちでその美しさをまじまじと、
時にはにやにやと眺めてしまう。


海神nereusは穏和で聡明な神であり、
変身と予言の力も持っていたという。

我が家のソファへと変身した海神から
いつの日か楽しい予言が聞けるかも
しれません。



Mar 19, 2013

a collar

スタンドカラーが多い。

シャツにしろアウターにしろ
立ち襟を見ると手が伸びる。






スタンドカラーは襟付シャツの原型とも言われる。
古代ローマ時代から着用されていたチュニック
(シャツの起源)のスリット部分に別布を付けたのが
襟の始まりで、それが首の周りを覆う立ち襟のような
ものだったという。


普通のシャツやジャケットでさえ襟を立てて
着てしまうので、立ち襟率は所有している
スタンドカラーよりも多くなる。


他の襟に比べると少々地味な印象ですが、
過度な装飾を排したその実直さにも
共感が持てるのです。



Mar 3, 2013

intermission

大掃除をしている時に限って
いろんなものを一つ一つ
しげしげと眺めてしまう。


今日はグッゲンハイム美術館に
珍しいお客様がいらっしゃった
との事。





と、お客様のご案内をしているうちに、
またしても時間は過ぎ去り、
大掃除の作業は次回に延期と
なってしまうのです・・・。



Feb 18, 2013

☐ + △

三角屋根を見つけるとついつい手がのびる。


蓋があるもの全般に弱いけれど、
特に三角屋根を擁しているものに弱い。





陶製のものはどちらも沖縄のもので、
我が家にとって守り神のような存在。
小さな厨子甕は上江洲茂生さんの作品で
大胆さとおおらかさが共存。
穏やかな気配でいつも見守っていてくれる。


木製のものはアジアのどこかの国
(失念してしまった・・・)のもの。
屋根の4辺のうち1辺の中央と土台の部分を
釘留めてしていて、屋根をくるりと廻して
開ける仕様。
開ける動作が特に楽しい。


一番の楽しみは中に何を入れようか考える時。
ガリバーのように屋根を開けたり閉めたりしては
相応しいものを考える。


それぞれの屋根の下では今日も小さな住人たちが
賑やかに暮らしているのです。



Feb 3, 2013

Austrian hat

こんもりと愛らしい横顔。





1903年に創業したオーストリアの
Muhlbauer のフェルト帽。


堅牢そうな容姿だが、実際にかぶってみると
良い具合に頭になじんで、しかもあたたかく
冬場の頼れる相棒である。


緑色のフェルトと羽飾りはオーストリアならではの
チロル帽を連想させ、どこか牧歌的である。
まあるいクラウンと小さなツバの不思議なバランス
も愛嬌がある。


その横顔を眺めているとだんだん生き物のように
見えてきて、時々こっそり動いているのでは
ないだろうかと密かに思っています。


Jan 20, 2013

tiny 09

木の匙。




以前、清澄白河にある
Babaghuriのスプーン展で
見つけたもの。

これに関してはスプーンというより
匙という呼び名の方が相応しい気が・・・。


まるで腹筋運動の途中に止められて
しまったような微妙な姿勢も愛嬌があり、
しかも当の本人は淡々としていて
その表情には貫禄さえ感じられる。




悠然としたその佇まいはどんなものも
受け入れてやろうと言っているかのように
見えるが、実は奇妙な体勢のおかげで
何かの支えなしには自立は厳しい。


いつもは誰かと誰かの間に挟まっていたり、
誰かに寄りかかっているということは、
ここだけの秘密なのです。


Jan 6, 2013

Playing Cards

大掃除をしている時に限って
あれやこれやと気になり、
掃除よりも手を止めて眺めている
時間の方が長くなっている。


今回もっとも進行を妨げたのは
このプレイングカード。





しかけ絵本で有名な英国の
ディーン&サン社によって
1865年に生産されたものの復刻。

そのコミカルな絵柄を見てしまうと
1枚では収まらず、全てのカードを
出して並べたくなる。

そしてその愛嬌のある雰囲気とは
裏腹に「角が丸くない」ところも
気にっている。


カードで新年を占うような事は
出来ませんが、この楽しい絵柄が
よき1年を連れてきてくれそうです。