Nov 20, 2017

CARTE POSTALE 3

まめ書房にて開催したポップアップショップ『アチコチズストア』第3弾は台風という悪天候にも関わらず多くのお客様にお越し頂き、無事終了致しました。改めてご来店頂いた皆様、ご協力頂いた皆様ありがとうございました。ポップアップショップにて初お目見えした商品は今後ネットショップにも順次アップする予定です、しばしお待ち下さいませ。

さて今回もバイヤー"A"による @calotype_fr氏のCARTE POSTALEコレクションを購入。毎回選ぶものにテーマがあるわけでは無いが過去を振り返ると登場人物が身に付けている衣類のディテールやデザイン、暮らしのかたちや様子が見て取れるものをチョイスしているようだ。どれにしようか悩むことを楽しみつつ小道具とそれを取り巻く人々との関係が気になる2枚に決定、勝手ながら「籠と3人の男」「ハリボテ写真館」と命名する。

まずはこちらを窺う怪しげな男と目が合う「籠と3人の男」。中央の箱は人ひとりがすっぽり収まる程のコンパクトさにも関わらず扉には小窓、壁面には装飾が施された「小屋」のようになっていて、ハンドルの存在でようやく籠だと認識する。がしかし、一体何処へ行く籠なのかは謎は残されていた為 @calotype_fr氏に解説を依頼、宛名面を見ると消印は1913年のもので『こんにちは〇〇さん、オーヴェルニュのクレルモン=フェランに行く途中のホテルにいます。』といった内容の文章が綴られているらしい。オーヴェルニュはフランスの中部に位置する4県から成る山や湖等の自然に富んだ地域圏で、Volvicを初めとするミネラルウォーターの水源が多く存在し、特に火山群の麓に位置するクレルモン=フェランは温泉療養地として有名なのだそうで、この事から籠はリウマチ等の疾患を持つ湯治客を施設まで運ぶのに使用されたという事が判明する。温泉療養地というとヨーロッパでは古くから存在するリゾート(滞在)型の医療施設で、フェリーニの「8 1/2」等映画でも度々登場する入浴したり飲泉を摂取しているあの場所で、特にフランスではナポレオン3世が各地の温泉地を訪れたことにより一大ブームとなったそうだ。
他、着ているものに目を移すと籠の運び屋である両脇の男性がどちらもBiaude(ビオード)を着用しているのが確認できる。これは側章入りのパンツや帽子と同じく制服だったと思われるのだが、右側の男性の方が帽子も目深に被りスカーフも巻き方が洒落ていて2者2様の着こなしなのがとても興味深い。ちなみにBiaudeといえば昨年購入したカードでもオーヴェルニュの男性がお出かけ着として着用している。籠運びの制服とお出かけ着では意味合いは違うけれど、Biaudeは今で言う所のジャケットのようなきちんとした印象を与えるものだったのではと想像する。ちなみに籠に乗っている男性の足元には木靴とストライプの布(?)が確認できる。

もう1枚は男性7人が飛行機に乗っている設定で写真に収まっている「ハリボテ写真館」。先頭の男性が握る操縦桿らしき小道具は用意されているものの、肝心の飛行機本体はあっさりというかかなり簡易的に描かれていて最後方の男性が持つハンカチもダラリと垂れ下がっており、全く臨場感を演出できていないユルさも魅力だ。年代も様々に見える7人の口元にはまんざらでもない笑みが浮かべられており楽しんでいる様子も窺える。ひとつ残念なのは全員が帽子と上着を着用しているもののディテールや素材感までは分からない事なのだが、これがカラーだったらどんなだろうかと想像するのもそれはそれで楽しい。

今回は他に"A"のブログ掲載時から狙っていたバスク織りのテーブルクロス19世紀末のフェーヴが奇跡的に残っていたので併せて購入。

2日間振り回された季節外れの台風も最終日の閉店時にはすっかり通過し、帰り道では星空まで見えるほど。終わり良ければ次回は晴れる、と心から夜空に願いました。