Aug 11, 2019

Like a Old Stone


遠くに良さそうな石仏を見つけたので意気揚々と近付いてみたが、どうも石仏では無いらしい。更に距離を縮めるけれどその正体は謎のままで、手に取ってようやく土人形だと判明した、それぐらい石仏みたいな土人形だった、姿は大黒天だ。


大黒天、というと打ち出の小槌を片手に俵の上に乗っているのが一般的な気がするのだけれど、これはどうも違う。頭上に不思議な丸い物体があるし、足元もなんだか変だ。何度見ても大黒天の顔だけは判別できるが、それ以外は何が何だか分からない。

実はこれ右足を俵に乗せ、両手で俵を担いでいる俵担ぎの大黒天なのだ。
これだけ彩色も剥がれ落ちているのにどうして正体が分かったかと言うと、実はこの少し前に別の俵担ぎを偶然手に入れていたからで、そうなると2体を並べない訳にはいかない。

ということで石仏似を持ち帰り、早速先に手に入れていた大黒天と並べてみた。


すると予想以上に大きさも似通っていて、その分違いが際立ってとても面白い。
石仏と間違えた方は左脇の下部分にかろうじて赤い色が確認できるぐらいで、その他の部分はすっかり色が剥がれている(この赤く彩色された部分は何なのか・・・腰紐?脱いだ上衣?なのだろうか・・・)。
そもそも石仏と見間違ったのは真正面からしか見ていなかった事が原因で、全体を矯めつ眇めつ見てみると土人形ならではの前後の接合部分もあるし、底の部分にも作者?所有者?らしき名前のようなものが書かれている。
それにしても土人形と分かっていてもこの剥がれ具合といい表面感といい、見事な石仏似だ。




一方彩色の残っている方は何ともコミカルな表情だ、俵を担いで重労働なはずなのになんとも余裕のある朗らかな表情。土人形と言っても様々な種類があって、同じモチーフでもとても緻密に絵付けされているのもあれば、この大黒天のようにかなりゆるい雰囲気のものもある。産地や作者それぞれに味わいがあり、それこそが土人形の醍醐味で、よってこうやってどんどん増えてしまうわけです。


2体を見比べているとどちらも本当に魅力的で甲乙付け難い。というより甲乙なんて付けなくて良いのだ、だってボブ・ディランが歌っても、ローリング・ストーンズが歌っても名曲は名曲なのだから。