Aug 30, 2016

Good and Bat

バットマンが何故バット(蝙蝠)なのかについては、たしか主人公が悪人に恐れを抱かせる象徴が必要だと思った時に自らのトラウマであり最も恐れている蝙蝠をそれに選んだ、といったような内容だったと記憶している。蝙蝠は恐怖や不吉なものの象徴という扱いだ。

しかし今回出会った蝙蝠は恐怖の象徴とは真逆の福をもたらす蝙蝠、しかも印籠という珍しいもの。所変われば品も変わるように、蝙蝠は中国では「蝠」と「福」が同音であることから代表的な吉祥文様として好まれ、蝙蝠文として陶磁器や調度品に使用されている。カステラの福砂屋の商標も吉祥を意味する蝙蝠文様で、両翼を広げた黒いあのマークと言えばイメージし易いかもしれない。


この木製の印籠に登場する蝙蝠は文様ではなく、蓋部分に鎮座する格好で彫られている。本体である下部分の内側は容器の役割を果たすように小さくくり抜かれ、蓋と本体の接合部分は凸凹で密閉できる構造となっている。現代の加工用語でインロー式やインロー構造と呼ばれるのは正にこの印籠の作りが由来だそうです。


続いて本体部分表面を見ると両面に吉祥図案で「寿」の文字が刻まれていることが分かる。この蝙蝠と寿の組み合わせはとてもめでたいものなので好んで使われることも多いらしく、なるほど仲良く並んだ後ろ姿も愛らしい。


それにしても、翼を広げていないからか真正面から見てもイメージする蝙蝠とは少々異なる。売り主のおじさんは顔が蝙蝠で身体は人間と言っていたが、確かに蝙蝠というよりガーゴイルやキメラの怪物を連想させる容姿である。(ちなみにこれを購入したのは韓国で、おじさんも吉祥文様や印籠については詳しくなく魔除けの一種なのでは?という見解だった)

しかし人間の身体というのもいまいち判別できず、印籠である事や寿の吉祥図案との組み合わせを考えると蝙蝠とするのが一番自然なのだが、もしおじさんの言う通り蝙蝠の顔を持つ人間だとすると・・・それこそバットマンということに・・・。

まあそれはそれで悪くないなと思っているのです。

Aug 14, 2016

New Items

フランスからやってきた美しいガラスを2品

眼にも涼しいカラフとミニグラスをachikochiz shopにアップしました。

なにとぞ、なにとぞ。



Aug 2, 2016

Hopper and Keene

古書店を見ると入ってしまう。
これは「パブロフの犬」と同じで、条件反射というか無意識に近い。

先日もたまたま通りかかった古書店にふらふらと入り、Edward Hopper(エドワード・ホッパー)の画集を手にして出てきた。

というのもホッパーの作品を最近手に入れたので、それが掲載されている画集を探しているのだけれど、これがなかなか見つからない。今回手にした画集にも結局お目当の作品は掲載されていなかったが格安だったのでついつい買ってしまった。

探している作品はこちら "Eleven A.M."  



ん?エドワード・ホッパーではないじゃないか!というご指摘の声が聞こえてきそうですが、そうでなのです、正しくは「アメリカのアーティスト Steve Keene(スティーブ・キーン)によるエドワード・ホッパーの"Eleven A.M."」。ちなみに板に描かれています。

ホッパーの作品には窓と人が登場するものがとても多く構図も独特なので、この作品を初めて見た時もどこかホッパーっぽいなと興味を持ったのがきっかけだった。検索したホッパーの作品と比べてみると窓と女性、青い椅子、壁の絵という要素は同じでも、当たり前だが作風も配色もその形(材質も!)も全く異なる。それなのにきちんとホッパーの作品が持つ空気感や喪失感は感じ取ることができるのは流石で、何よりもホッパー云々を抜きにしてもとてもとても魅力的な作品。


せっかく画集を購入したので、ホッパーの作品も。
"Office in a Small City"


これも窓と人が登場するが、現実的には有り得ない程の大きな窓にはガラスが入っておらず、まるで映画のスクリーンのようにも見えてくる。映画監督のアキ・カウリスマキやヴィム・ベンダースがホッパーから影響を受けたというのが分かる気がする1枚。

それにしても今回のように好きなものが思わぬところで繋がるのはとても楽しい偶然。だから今日も古書店を見つけてはふらふらと入って行くのです。