しかし今回出会った蝙蝠は恐怖の象徴とは真逆の福をもたらす蝙蝠、しかも印籠という珍しいもの。所変われば品も変わるように、蝙蝠は中国では「蝠」と「福」が同音であることから代表的な吉祥文様として好まれ、蝙蝠文として陶磁器や調度品に使用されている。カステラの福砂屋の商標も吉祥を意味する蝙蝠文様で、両翼を広げた黒いあのマークと言えばイメージし易いかもしれない。
続いて本体部分表面を見ると両面に吉祥図案で「寿」の文字が刻まれていることが分かる。この蝙蝠と寿の組み合わせはとてもめでたいものなので好んで使われることも多いらしく、なるほど仲良く並んだ後ろ姿も愛らしい。
それにしても、翼を広げていないからか真正面から見てもイメージする蝙蝠とは少々異なる。売り主のおじさんは顔が蝙蝠で身体は人間と言っていたが、確かに蝙蝠というよりガーゴイルやキメラの怪物を連想させる容姿である。(ちなみにこれを購入したのは韓国で、おじさんも吉祥文様や印籠については詳しくなく魔除けの一種なのでは?という見解だった)
しかし人間の身体というのもいまいち判別できず、印籠である事や寿の吉祥図案との組み合わせを考えると蝙蝠とするのが一番自然なのだが、もしおじさんの言う通り蝙蝠の顔を持つ人間だとすると・・・それこそバットマンということに・・・。
まあそれはそれで悪くないなと思っているのです。