May 7, 2018

Oni to Kami


フリーダとディエゴのコレクションを見てメキシコにも2本の角を持つ鬼に似たDiablo(悪魔)やJudas(ユダ)なるものが存在することを知った。このユダ(裏切り者)と悪魔はセマナ・サンタ(イースター)祭では巨大な張り子(パペルマチェ)で作られ、祭りの最終日に燃やされるらしい。(映画の「フリーダ」にも角のある人間ほどの大きな張り子を抱えてるシーンがあったが、あれがユダか悪魔のどちらかだったのだろう。)面白いのはこれらの張り子は燃やされるばかりではなくフォークアートとして評価される一面も持ち合わせている事で、そういった意味でも日本の鬼と共通する部分が多い。

日本で鬼というと赤鬼や青鬼を思い浮かべるが、我が家にはそんなイメージとは少々異なる鬼がいる。


黒々と広がる羽のように目の周りを覆う眉毛、大きな鼻と口と牙、更には角張った大きな顎には隈取りのように赤と黒の線が描かれ、その顔つきは威圧的で迫力満点だ。が、頭部に目を向けてみるとそこには赤と黒のポップなドット柄が配されていて、怖がるべきか微笑むべきかなんとも不思議な気分になる。


インパクトのある表情を頼りに正体を調べてみると、これは備中神楽で使用される建御名方神(たけみなかたのかみ)の面であり、建御名方神とは古事記の「国譲り」神話に登場する大国主神の子の一人である。
ちなみにその父親の大国主神というのは因幡の白兎に出てくる「だいこくさま」の事で、かの出雲大社の祭神でもある。ところが調べてみるとこの呼び名については複雑な部分があるらしく、出雲大社のH.P.にも大国主神は”だいこくさま”とも呼ばれる神ではあるが仏教からきた”大黒天”とは「正確には別の神様」だとわざわざ説明されている。確かに神道と仏道は異なるものなので正確に同じ神様とはならないのだろうけど、実際には神仏習合して大国主神と大黒天が同一視される事も多いようだ。
更には同じ国譲りに登場する事代主神(ことしろぬしのかみ)も大国主神の子であり、神話の中で漁に出ていた事から釣り竿と鯛を持つ漁業の神”えびすさま”と同一視される事も多いらしい。よって、だいこく様を大国主神、えびす様を事代主神として祀っている神社も実際に存在している。(えびす様を少彦名命とすることもあるらしい)
ここである何かに気づいてしまった。そうなのだ、事代主神=えびす様、大国主神=だいこく様と考えると「コンビ」だと信じて疑わなかった大黒天と恵比寿天は「親子」だという事になる・・・。



衝撃の結果はさておき建御名方神の面を詳しく見てみると、どのアングルから見ても確かに迫力満点なのだが同時にその表情にはどこかしら愛嬌がある。備中神楽で使用される他の面も表情は様々だが、こんなにも派手なのは建御名方神だけのようだ。なぜ一人だけこんなにも派手なのか、なぜ縞と水玉なのか(水玉のない建御名方神面もある)、知れば知るほどに次から次へと疑問が湧いてくる。そして中でも最大の疑問は、どうして建御名方「神」なのに鬼の面なのかという事。
秋田のなまはげのように来訪「神」でありながら「鬼」の容姿であったり(これにも諸説あるようだ)、風神雷神など「神」と「鬼」が密接に関わっている事は意外と多い。だがこれらにも様々な見解があるようで簡単には知りたい答えに辿り着きそうにもない。来年の事でも鬼に笑われてしまうけど、いつかこれらの課題に自分なりの解釈を見つけたいと思う。