Jan 4, 2016

CARTE POSTALE

危険なものを見つけてしまった。
昨年開催したアチコチズストアに合わせて、バイヤーAがフランスより持参した
@le_mange_disque氏のCARTE POSTALE 及び CARTE PHOTOのコレクションである。
コレクションブックを眺める事2日間、結局最初に気になった2枚を今回は選ぶ事にした。パリのメトロ周辺の様子を切り取ったものと気難しい顔をした男性達の集合写真である。
   

この2枚について@le_mange_disque氏の解説を以下に引用。
まずはメトロ周辺の風景を写したこちらから。
『これはポストカードで、1900年頃の物。Phototypie(フォトティピー)という、リトグラフに似た方法で印刷されているオフセット印刷の登場は1930年頃なので、オフセットではない。フォトティピーは500枚生産くらいで版がダメになるので、たぶん多くて2000枚くらい作られたのかも?)。現存するメトロ2番線&13番線の出口を写した物で、背景にメディカルセンター(1階が薬局、2階が歯医者、3階が助産院の看板)の建物で、しかも今も1階は薬局(!)である。』との事。

更にはバルコニーのデザインと壁のレリーフを手がかりに場所と建物まで特定してくれた。(まるで腕の良い探偵のようだ)
確かに見比べてみると店舗や看板は変われども建物自体は100年前と全く同じ。しかも後方には同じメトロの出入り口も存在している。
ヨーロッパでは100年以上前の建物は珍しくない為、こうやって古いポストカードと今の光景を探して見比べるという非常に楽しい作業が可能である為、コレクションしてしまう気持ちがとてもとても良く分かる。


さて、もう1枚の誰も微笑んでいないミステリアスな集合写真についての解説は以下の通り。
『何かの工場か工房前での従業員&管理職(いい服着てるのが管理職数名)の記念撮影で、服装の感じから察するに1910年頃だろう。これはCarte Photo(カルト・フォト。フォトのカード)という手法で作られている。ハガキ大の印画紙(表面が印画紙、裏面は字が書けるようにマットな普通紙)に、写真家が1枚1枚を手で現像したもので、フォトティピーに比べるとぐっと生産数が少ない。手間を考えると、多くて100枚ぐらいか?銀塩写真の歴史の最初期で、臭化銀を使った現像(光の具合によってはサテンぽい銀色が表面に見えるのはそのせい)。』との事。

確かにメトロ周辺のものは手触りがマットであるのに比べこちらの集合写真は光沢があり、より一層写真っぽい。それにしてもこれらが写真ではなく、ポストカード(裏面には住所欄と通信欄があり中央で線引きされている)となっているのがとても興味深い。
また商業写真では見ることのできない当時の労働者の様子がリアルに写っており、服飾の歴史的観点からも貴重なものだそうで、こういったものが映画やドラマの時代考証の資料となったり、ファッションデザイナーのアイデアソースに繋がっているのだろうと思うとそれだけでワクワクしてくる。それにしても髭率の高いこと・・・。

何はともあれCARTE POSTALEの世界はとても危険である。
一歩足を踏み入れただけでこれだけ面白いのだから、この先にはかなり楽しい世界が待ち受けているに違いない。
個人的には@le_mange_disque氏のコレクションを本にしてしまいたいぐらいなのだが、まずは次回どれを手に入れようか今からイメージトレーニングに励みたいと思います。