Dec 12, 2016

CARTE POSTALE 2

アチコチズストアの開催からすっかり時が過ぎてしまい気がつけば師走。楽しかった思い出を噛みしめつつ、イベント時に購入したものをいくつか紹介したい。

主催者でありながら"A"がフランスから持ち帰ってくる品々はお客様同様に楽しみにしており、中でも@calotype_fr氏(アカウント名変更したそうです)のコレクションをまとめて見るにはフランスまで飛び立つ以外にはこの機会しかないので、昨年に引き続き今回も会期中こっそり眺めては熟考するを繰り返して最終的に2枚に絞り込む。

その1枚目がこちら。

5人の男女が野外で踊っているもので、そのシチュエーションはインパクト大。
以下"A"による解説
『これはフランスの中央山岳部オーヴェルニュ地方の伝統的な踊りの絵葉書。
https://www.youtube.com/watch?v=a0j9dTBJWWE
Wikipediaによると16世紀にヴァロワ家のマルゴがオーヴェルニュ地方を訪れた時に興味を持ってパリにもたらし、宮廷ダンスの原型となった。宮廷での舞踏会に始まり、舞台演劇、オペラ、クラシックバレエへと発展していく。宮廷の社交ダンスの原点。1913年の消印があるが撮影はもっと前のはずなので、1900年から1910年あたりの光景と思われる。
なんという衝撃の事実!映画「王妃マルゴ」の世界観とこの牧歌的な踊りを脳内で結びつけるのは至難の技だが、そもそも音楽に合わせて皆が一斉に踊るという経験が無かったならば、これはとても魅力的だったはず、まさにマルゴの知られざる偉業である。
他、シチュエーション以外にも着目したいのがそれぞれの服装。
まるで映画の1シーンのように十字架のオブジェ("A"曰くお墓ではなく村の道標のはず、との事)にもたれてバイオリンを弾いている男性と手前の男性が着ているスモック型の衣類はBiaude(ビオード)と呼ばれるもので、麻のインディゴ染めのものを野良着の上からかぶって祭りや教会の礼拝に行ったお出かけ着なのだそう。そういえば"A"のブログで紹介されていた素敵なBiaudeを唇を噛みつつ読んだ記憶が…。(前述した@calotype_fr氏のinstagramにもBiaudeのディテールが良く分かる画像あり。)男性の着るスモック型の民族衣装と言えばロシアのルバシカを始めいくつか思い浮かぶが、よくよく考えると貫頭衣に始まりトゥニカやブリオー等、男性の服飾史はスモック(チュニック)とは長い付き合いなのだと改めて思うちなみに女性陣はヨーロッパ諸国の伝統衣装で多く見られる帽子と前掛け、たっぷりギャザーをとったスカートという装い。足元は全員が木靴、フランスなのでSabot(サボ)ということになりますね。

2枚めはこちら。

VETEMENTS de TRAVAIL(作業服)と書かれた商店の看板の下で男性がポーズをとっているもの。
"A"の解説によるとパリか地方かの特定は出来ないが、撮影されたのは1905年から1913年頃のものらしい。細部を見てみると店主であろう男性が着用してしているシャツもディスプレイされているシャツもいずれも立ち襟というのがとても興味深い。と言うのも19世紀後半から襟型は立ち襟からウイングカラーに近い一部折り襟スタイルを経て、20世紀に入ると現代の襟型の原型となる折り襟が主流になる。その流れが地方や労働者階級に広がるまで少し時間がかかったのだとしても当時が立ち襟時代の末期であったのは確かなので、それを思うとなんだか感慨深い。また陳列されている他の商品にベレーやボーダーシャツが見られるのもいかにもフランスらしいところ。
この絵葉書は@calotype_fr氏が自身のコレクションをスキャンしフォトショップで傷んだ部分を半月ほどかけて全て修正したもので、限定100部。これのオリジナルは絵葉書ではなくフォトカード(carte photo)と言って、印刷ではなく、絵葉書の裏面がすでに印刷された印画紙に直接現像したものなのだそうだ。いつかオリジナルを見せてもらおうと心に決める。

そして最後にパリの地図。

これは"A"のブログに紹介されているのが元の地図で、それを"A"が紙の傷み具合までスキャンしレンズ歪み等々の修正を加え全く同じサイズで完成させたオリジナルに忠実な複製品、こちらも限定100部。(オリジナルも見せてもらったが、本当に良く出来た複製品で1944年から1947年頃のもの。"A"の仕事の細やかさには毎回感心しきりである。)ブログに書かれているように地図に載っている省庁の存在期間を調べる事でおおよその年代が分かる辺りが地図の楽しい所で、日本の古地図で馴染みの地名や橋の名前を見つけた時の喜びに似ている。更に嬉しいことにこの地図は主要な建物が立体的に描かれている種類のもので、妹尾河童さんの覗いたシリーズのファンとしては特に好きなタイプの地図だ。じっくり地図上を旅した結果、エッフェル塔とシテ島辺りの眺めが一番のお気に入り。



因みに"A"のブログでも記述があるように、この地図に使用されているGill Sansはとても好きな書体のひとつ。こうやって好きなものが自然と集まるのだなと妙に感心したのです。