Jan 2, 2018

Happy New Year 2018

笑福萬来

本年も何卒宜しくお願い申し上げます。

(勅使河原敬 犬張子 1965)


Dec 24, 2017

The Wall and I

新年に向けてそろそろ壁面を入れ替えようと思い候補になるものを出してみたら結構な数の「入れ替え待ち」がある事に気がついた。いつか飾ろうと思ってその都度手に入れたものがそれなりの量になってしまっている。

絵や写真が飾られているのが自然な環境で育ったので、壁面に何も無い空間は少し苦手だ。今の家に引っ越した時もまず最初にしたのは空っぽの壁に前の部屋から持ってきたレンテン族の布(風呂敷)を飾ることで、居慣れない空間に見慣れた物が在るというのがこんなにも心強い事なのだと痛感した出来事だった。きっとそれは人によっては誰かの存在であったり家具であったり、はたまた香りや音楽であったりするのだろうけど、いずれにせよ自分の眼や身体に馴染んだものが側にあるというのは頼りになる。

広げた入れ替え待ちを前にしてみると、どれもまだ額装していない事に気付く。以前なら額装しないといけない、と焦るところだがここ最近自分が好きなものを気ままに貼ったり付けたりしているうちに額装へのこだわりもすっかりなくなってしまった。中には額装すると決めているものもあるけれノープランのものも多く、とりあえず今飾りたいものを先にピックアップしてみる。

まずは少しずつ集めているドイツのTHILO MAATSCH1900-1983)のスモールピース。シンプルだけれどもインパクトのある構図、しかも黒と金という強い組み合わせのはずなのに柔らかな印象で、そこがとても良い。



次の2枚は何年か前に奈良の空樒で購入した東泰秀さんの作品。確かジョルジョ・モランディをテーマにした企画展で、本来この作品には甲斐みのりさんのテキストが別紙で添えられている素敵な冊子なのだけれど、いつか飾りたくて冊子にせずに置いていたもの。車窓からの景色と宝物のように仕舞われた人形や小物、どちらもとても好きなテイストだ。




THILO MAATSCHの作品は初めから額装するつもりだったので早速細めの黒フレームで素っ気ないぐらいあっさりした額装をオーダーした。古い額縁も似合いそうだけれど、他の2枚とのバランスを考えて今回は新しいものにした。

直感で選んだ3枚に強引ながら新年への抱負を重ねるとすると、色んな場所に飛んでいき、色んな景色を見て、大切に感じるものを一つでも多く見つけていきたい、というところだろうか。

額装の仕上がりが今からとても楽しみだ。





Nov 20, 2017

CARTE POSTALE 3

まめ書房にて開催したポップアップショップ『アチコチズストア』第3弾は台風という悪天候にも関わらず多くのお客様にお越し頂き、無事終了致しました。改めてご来店頂いた皆様、ご協力頂いた皆様ありがとうございました。ポップアップショップにて初お目見えした商品は今後ネットショップにも順次アップする予定です、しばしお待ち下さいませ。

さて今回もバイヤー"A"による @calotype_fr氏のCARTE POSTALEコレクションを購入。毎回選ぶものにテーマがあるわけでは無いが過去を振り返ると登場人物が身に付けている衣類のディテールやデザイン、暮らしのかたちや様子が見て取れるものをチョイスしているようだ。どれにしようか悩むことを楽しみつつ小道具とそれを取り巻く人々との関係が気になる2枚に決定、勝手ながら「籠と3人の男」「ハリボテ写真館」と命名する。

まずはこちらを窺う怪しげな男と目が合う「籠と3人の男」。中央の箱は人ひとりがすっぽり収まる程のコンパクトさにも関わらず扉には小窓、壁面には装飾が施された「小屋」のようになっていて、ハンドルの存在でようやく籠だと認識する。がしかし、一体何処へ行く籠なのかは謎は残されていた為 @calotype_fr氏に解説を依頼、宛名面を見ると消印は1913年のもので『こんにちは〇〇さん、オーヴェルニュのクレルモン=フェランに行く途中のホテルにいます。』といった内容の文章が綴られているらしい。オーヴェルニュはフランスの中部に位置する4県から成る山や湖等の自然に富んだ地域圏で、Volvicを初めとするミネラルウォーターの水源が多く存在し、特に火山群の麓に位置するクレルモン=フェランは温泉療養地として有名なのだそうで、この事から籠はリウマチ等の疾患を持つ湯治客を施設まで運ぶのに使用されたという事が判明する。温泉療養地というとヨーロッパでは古くから存在するリゾート(滞在)型の医療施設で、フェリーニの「8 1/2」等映画でも度々登場する入浴したり飲泉を摂取しているあの場所で、特にフランスではナポレオン3世が各地の温泉地を訪れたことにより一大ブームとなったそうだ。
他、着ているものに目を移すと籠の運び屋である両脇の男性がどちらもBiaude(ビオード)を着用しているのが確認できる。これは側章入りのパンツや帽子と同じく制服だったと思われるのだが、右側の男性の方が帽子も目深に被りスカーフも巻き方が洒落ていて2者2様の着こなしなのがとても興味深い。ちなみにBiaudeといえば昨年購入したカードでもオーヴェルニュの男性がお出かけ着として着用している。籠運びの制服とお出かけ着では意味合いは違うけれど、Biaudeは今で言う所のジャケットのようなきちんとした印象を与えるものだったのではと想像する。ちなみに籠に乗っている男性の足元には木靴とストライプの布(?)が確認できる。

もう1枚は男性7人が飛行機に乗っている設定で写真に収まっている「ハリボテ写真館」。先頭の男性が握る操縦桿らしき小道具は用意されているものの、肝心の飛行機本体はあっさりというかかなり簡易的に描かれていて最後方の男性が持つハンカチもダラリと垂れ下がっており、全く臨場感を演出できていないユルさも魅力だ。年代も様々に見える7人の口元にはまんざらでもない笑みが浮かべられており楽しんでいる様子も窺える。ひとつ残念なのは全員が帽子と上着を着用しているもののディテールや素材感までは分からない事なのだが、これがカラーだったらどんなだろうかと想像するのもそれはそれで楽しい。

今回は他に"A"のブログ掲載時から狙っていたバスク織りのテーブルクロス19世紀末のフェーヴが奇跡的に残っていたので併せて購入。

2日間振り回された季節外れの台風も最終日の閉店時にはすっかり通過し、帰り道では星空まで見えるほど。終わり良ければ次回は晴れる、と心から夜空に願いました。

Oct 15, 2017

And Then There Were None

アガサ・クリスティの作品「そして誰もいなくなった」には人形が重要な役どころで登場する。結末を知ってるくせに人形に降りかかる災難と展開をハラハラしながら読むのが毎回の恒例だ。

クリスティ作品では10体だったがこちらは11体、さつま人形である。
売り主の話では大名行列を模したものらしいのだが毛槍や駕籠、馬も見当たらないので完品かどうかは疑わしい。けれども一つ一つを手に取ってみると鋭い眼光とは裏腹に四角ばった姿が勇ましかったり微笑ましかったりと、あまりにも魅力的で完品かどうかはそのうちどうでもよくなってしまった。



彩色や小道具に対する細やかさとは裏腹に大切な島津家の家紋がかなりラフに見え無くもないが、それもご愛嬌。

それぞれの顔つきや装束の違いを見比べるだけでもなんと楽しいことか。中でもインパクトのあるポーズを飄々とこなす奴さんは存在感が抜群、個人的なイチオシである。

さつま人形といえば傍に犬を従えた西郷さんの「いかにも土産物」的なものを目にする事はあるがその他の種類、特にこのサイズ(9cm〜15cm)のものはとても珍しい。ひょっとすると趣味で作られた類のものかもしれないけれど、どういった経緯にせよとても丁寧に手をかけて作られている事は十分に伝わってくる。

ちなみにこのさつま人形は10月28・29日に開催されるポップアップショップ「アチコチズストア」で販売するもの。そういえば会場のまめ書房にはアガサ・クリスティのペーパーバックがディスプレイとしてさり気なく置かれていた。あの空間にこの11体が並ぶのが今からとても楽しみだ。


Oct 2, 2017

出張ブロカント『アチコチズストア』2017

今年も10月28日(土)& 29日(日)の2日間、神戸・岡本にある「まめ書房」にて出張ブロカント『アチコチズストア』を開催致します。
第3弾となる今回は、マニアックな部分はよりマニアックに、面白いものは更にジャンルレスに、バイヤー"A"と"C"が1年間それぞれに集めてきたものを展示販売致します。


わたくし"C"からはイヌイットアートにフォーカスしたソープストーン製のオブジェや壁飾り、またドイツを中心としたスモールピースの「飾りたくなる」リトグラフを今回新たに持って参ります。その他にも日本の古い郷土玩具や道具類(珍しいさつま人形や菓子型等)、様々な国のオブジェや陶器などなどを用意しています。"A"からは毎年ご好評をいただいている稀少なヴィンテージ衣料やバスク模様のうつわの他に古いポストカードや写真等、魅力的な品々をパリから携えて来る予定です。

秋も深まる2日間"A"と"C"共々皆様のお越しを心よりお待ちしております。

ー出張ブロカント『アチコチズストア』ー
会期:20171028日(土)ー1029日(日)
会場:まめ書房ギャラリー
住所:神戸市東灘区岡本1-12-26 マンション藤105
    (阪急岡本駅 徒歩3分・JR摂津本山駅 徒歩5分)
時間:11時から19
*お支払いは現金のみとさせていただきます。

Aug 29, 2017

News Boys

青色の布帛に黄色の文字、それだけでも十分目を惹く姿だ。加えて2種類の書体が使用されているので尚更興味深く、詳しく見てみるとポケットと紐も付いていて、これがエプロンだという事が分かる。


ではこのエプロンの正体は?というと、答えは文字にあった。上段にプリントされた"READ THE"のシンプルな書体に対して下段は恭しい書体で"Inquirer"とある、これは1829年から続くアメリカの新聞社"The Philadelphia Inquirer"のロゴの一部でクラシックな書体は(多少の変化はあるものの)現在も使われている。新聞社の名前が大々的にプリントされたエプロンやバッグは新聞の売り子たちが販売の際に身に付けていたもので、そういえば「ニュージーズ」という1899年にニューヨークで実際起こった新聞売り少年たち(News Boys)のストライキを題材にした映画があった。
持ち物目線で久しぶりに見てみると、ストライキを実行する主人公の少年(若かりし日のクリスチャン・ベイル!)が身につけていたのはベルトループに通したロープだけで、そこに新聞の束を引っ掛けている。他の少年たちも肩の上に担いだり脇に抱えるのが殆どで、結局目当てのエプロンやバッグは見つけられなかった。そこで当時の写真を検索してみると1900年前後では新聞の束を手で抱えている姿が多く、1910年以降少しずつバッグを持つ姿が見られるようになった。だが検索しながら何よりも気になったのは新聞を詰め込んだバッグを引きずるようにして持つ姿や、抱えた新聞が異様に大きく見えるほど彼、彼女らが幼い事だった。これらの写真には児童労働禁止へ尽力したルイス・ハインが撮影したものも多く、「ニュージーズ」でも売り子となるのは孤児や貧困層の子どもたちで、自らが捌けると思う部数を自費で買い取り、売れた分との差額が儲けになるという厳しい仕組みだった。
実際1899年のストライキもコスト削減のために販売価格は据え置いて仕入価格だけを値上げした新聞社に対抗したもので、ストライキは2週間続き最終的には新聞社が売れ残りを買い取る事で解決している。(値上げをした新聞社2社のうちのひとつはピューリッツアー賞を設立したジョーゼフ・ピューリッツァーの「ニューヨーク・ワールド」紙だった)その後アメリカでは1938年に労働基準法が成立し過酷な児童労働の禁止が制定された。


さて話を"Inquirer"のエプロンに戻すと、染色やプリントの具合から恐らく1950年〜60代のものだろうと推測されたのだが、実際に新聞を入れてみてこのエプロンがいかに実用的でなかったのかがよく分かった。マチが無いので入る部数も限られ、これを使った売り子はさぞや補充に手間取っただろうと想像する(つり銭を入れたり広告的な役割だったのかも)。しかも路上での販売から自転車での配達に移行してますますエプロンの出番が少なくなったのは容易に想像され、代わりに自転車に取り付けるタイプや車道での接触防止に夜光塗料が施されたバッグが登場している。
それにしても容れ物は時代に沿って変化しているのに新聞そのものは仕様や材質にほぼ変化が無いのも面白い。1899年も今もガサゴソと音を立てながら読むのだから。


Aug 17, 2017

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