Jun 26, 2013

white mustache

視線を感じて振り返ると赤い服の小さな老紳士と目があった。




挨拶がてら手に取って紳士の足元に目をやると、 
なにやら風変わりな装い。

さりげなく栓抜きがコーディネートされた足元は、
硬い材質ゆえ少々歩きづらそうではあるものの、 
その立ち姿はピンと背筋が伸びていらっしゃる。


お互い赤色好きという事もあり、紳士には
我が家へお越しいただく結果となった。

用意した瓶ビールでご自慢の技を披露してもらうと、
テコの原理も作用してそれはそれはスムーズ。

唯一の問題は開けるべき栓があまり無いことだが、
それについては黙っておこうと思っている。


70年代にアメリカのIDEAL社から日本にやってきたという老紳士。

実は長い旅路の中で立派な白髭を何処かに忘れてきた
とのことだったので、こちらで勝手に(ポワロ風に)
あつらえさせていただいた。

 
新しい白髭、気に入ってもらえたら良いのですが…。
 
 
 
 

Jun 9, 2013

a basket

オレンジ色した市場籠がある。





沖縄のブランドYOKANGがfennicaのモチーフである
ツバメをスプレーしたもので、年中持ち歩いているが、
この季節になると出番が増える。


荷物が多く、しかも形を崩したくないものを
持ち歩く時にはこれに限る。
それは野菜、果物、卵や肉と色んな形状と
素材のものを受け容れてきた市場籠ならでは
の許容範囲の広さだと思う。


しかも屋内では本やCD、布モノ等々の収納籠
という役割もこなし、とにかくとても頼りになる。


加えて、これを持っていると色んな人に
話し掛けられるというエピソードもついてくる。


百貨店や信号待ち、電車内で声をかけられる度
中をまじまじと覗き込まれると、気恥ずかしくもあり
少し誇らしくもあるのです。


May 30, 2013

ninjin kinatetsu

明治時代のワインボトル。





どっしりとした胴回りに比べて、最後の最後で
チカラが抜けてしまたような、そんな首元の
よろけ具合がなんとも愛らしい。


首元は少々くだけているが、ラベルは西洋風の
モダンなデザイン。 
葡萄房のイラストと共に中央に配された商品名と
おぼしき横文字を眺めるとそこには
  NINJIN KINATETSU 』 という文字が。





ニンジン、キナテツ。



このニンジンキナテツの謎を解明すべく、 
よろけた瓶を上下左右から近づいたり
離したりしつつじっくり取り調べたところ、
色の抜けたラベルに薄っすらと残った朱色で
『鐡那規参人』の文字を発見

右横書を左横書きに並べ替えると
『人参規那鐡』(ニンジンキナテツ)と読める。

嬉々としてこれをネットで調べたところ、明治時代に
人参規那鐡葡萄酒なるものがあった事が判明
以下MIHOミュージアムのページより。

『明治四十年代には、「人参規那葡萄酒」ないし
「規那鉄葡萄酒」と呼ばれる薬用酒が流行した。
これは滋養強壮の目的のものであり、この「人参」とは
朝鮮人参、「規那」とはアカネ科の常緑高木キナの樹皮
から採れる「キニーネ」、そして「鉄」とは貧血に効くという
鉄分を指している。』

は思いの外あっさりと解けた。


ニンジンキナテツ騒動も無事解決したところで、
出自の判明したご本人に目をやると、
何をそんなに騒いでいるのかと小首を傾げて
こちらを見ていらっしゃいました。


May 6, 2013

SAMIRO YUNOKI


新しい場所に見慣れたものがあると安心する。
それはハンバーガーやコーヒーショップチェーンの
看板を異国の地で見かけるとほんの少し落ち着くのと
なんとなく似ている。



柚木沙弥郎さんの型染めを部屋に掛けた。
するとたちまちそこがいつもの空間となり、
なんだかとてもほっとする。






手に馴染んだブレスレットや
身体に馴染んだ服、
好きな香りがあると落ち着くように、
この型染めは自分の居場所を
教えてくれる地図のようなもの。


あまり多くを語らない彼らですが、
その飄々とした表情が
時にはとても頼りになるのです。



Apr 21, 2013

umanome

この渦巻きを馬の目と呼ぶなんて、
名付けた人はセンスがある。


本来は馬の目を描いたものでは無いそうだが、
言われてみると確かに馬の目に見えてくるから
不思議だ。





模様や色の呼称は知れば知るほど
本当に面白い。


この馬の目皿は明治辺りのものだそうで、
高台は無くべた底。なので底に厚みがあり、
小皿だけれども重みがある。


くるくると流れるように描かれた馬の目模様は、
描いた職人さんのリズムにのった筆使いまでも
見えるようで、思わずなぞってしまうのです。


Apr 4, 2013

nereus

JOHANNA GLLICHSENの生地を
ソファに張ってもらった。

長年思い描いていたので、
完成してとても嬉しい。




今回の生地の名前はnereus。
ギリシャ神話の海神の名前だそうで、
その名にちなんだ同名の小惑星も
存在するらしく、なんとも壮大。


JOHANNA GLLICHSENのものに関しては、
初めて目にして以来少しずつ少しずつ
集めてきたので、今は毎日どこかしらで
目にする事が出来る。

驚くべきなのは、こんなに日々目にしているのに、
いつ見ても新鮮に映るということ。

そのパターンや配色は見る度に驚きがあり、
毎回新たな気持ちでその美しさをまじまじと、
時にはにやにやと眺めてしまう。


海神nereusは穏和で聡明な神であり、
変身と予言の力も持っていたという。

我が家のソファへと変身した海神から
いつの日か楽しい予言が聞けるかも
しれません。



Mar 19, 2013

a collar

スタンドカラーが多い。

シャツにしろアウターにしろ
立ち襟を見ると手が伸びる。






スタンドカラーは襟付シャツの原型とも言われる。
古代ローマ時代から着用されていたチュニック
(シャツの起源)のスリット部分に別布を付けたのが
襟の始まりで、それが首の周りを覆う立ち襟のような
ものだったという。


普通のシャツやジャケットでさえ襟を立てて
着てしまうので、立ち襟率は所有している
スタンドカラーよりも多くなる。


他の襟に比べると少々地味な印象ですが、
過度な装飾を排したその実直さにも
共感が持てるのです。