明治時代のワインボトル。
どっしりとした胴回りに比べて、最後の最後で
チカラが抜けてしまったような、そんな首元の
よろけ具合がなんとも愛らしい。
首元は少々くだけているが、ラベルは西洋風の
モダンなデザイン。
葡萄房のイラストと共に中央に配された商品名と
おぼしき横文字を眺めるとそこには
『 NINJIN KINATETSU 』 という文字が。
ニンジン、キナテツ。
このニンジンキナテツの謎を解明すべく、
よろけた瓶を上下左右から近づいたり
離したりしつつじっくり取り調べたところ、
色の抜けたラベルに薄っすらと残った朱色で
『鐡那規参人』の文字を発見。
右横書を左横書きに並べ替えると
『人参規那鐡』(ニンジンキナテツ)と読める。
嬉々としてこれをネットで調べたところ、明治時代に
人参規那鐡葡萄酒なるものがあった事が判明。
以下MIHOミュージアムのページより。
『明治四十年代には、「人参規那葡萄酒」ないし
「規那鉄葡萄酒」と呼ばれる薬用酒が流行した。
これは滋養強壮の目的のものであり、この「人参」とは
朝鮮人参、「規那」とはアカネ科の常緑高木キナの樹皮
から採れる「キニーネ」、そして「鉄」とは貧血に効くという
鉄分を指している。』
謎は思いの外あっさりと解けた。
ニンジンキナテツ騒動も無事解決したところで、
出自の判明したご本人に目をやると、
何をそんなに騒いでいるのかと小首を傾げて
こちらを見ていらっしゃいました。