描かれてたキリストが修復後には全くの別人になってしまった、という騒動が何年か前にスペインの教会であった。
発覚当初は散々叩かれてたというのに画像が世に広まるにつれ話題の絵を見ようと教会への訪問者が増加、その結果入場料も徴収するようになり(保存や慈善活動に充てるらしい)更にはその絵をプリントしたグッズまでも販売されたのだそうだ。作者も教会側も色んな意味でまさかこんな事になるとは思って無かっただろうけど、今の時代を映した顛末だと思う。
この土人形の顔はまさにその騒動を思い起こさせるレベルだ。シルエットや凹凸から推察すると恐らく饅頭喰い人形なのだろうけど持っている他のと並べてみると全然違う、まさに別モノだ。
まず饅頭喰い人形ならば両手に饅頭を持っているはずなのだが見当たらない。
何故饅頭なのかというと、これは大人に父と母とどちらが好きかと聞かれた子どもが持っていた饅頭を二つに割ってどちらが美味しいか、と問い返したという説話からきているらしい。
饅頭喰い人形と言えば落語「三十石」でも京土産として登場するし、饅頭括りにすると「饅頭こわい」もある。
落語の楽しみは同じ演目でも噺家によっても異なるし、上方と江戸落語でも違って聞こえるし、更には同じ噺家でもその時々で変化するところだ。まず基本の型があって、それぞれの個性や技やタイミングで変容を遂げる。
そうこう考えていると、この饅頭喰い人形が仮でも別物でも何ものでも、もうそれはそれで良いのだと思えてしまう。
徳力富吉郎作 饅頭喰い