それまでさして興味が向かなかったものに対して突然自分のアンテナが反応する時がある。今回がまさにそれだった。
ポートレートに関しては写真であれば好きだけど、絵画になると手に入れようとは全く思わなかった、これまでは。
なのに目の前には気難しそうに座るおじさんの人物画がある。描かれた本人はこちらを見ているわけでもないので、ポートレートと言うより電車の向かい側にたまたま座っているおじさんのスケッチといった感じだ。我ながら何故これに反応したのか良く分からないのだけれど、やはり何度見ても良いなと思う、この絵にはそんな不思議な引力がある。
作者はFritz Trögerというドイツ人の画家で、他の作品について調べてみるといくつか作風に種類があるものの、描かれているのは郊外の風景や働く人々の様子やその人そのものであり、一貫して市井の人々とその日常が切り取られている。
昔からストリートスナップのような視点が好きなので、作者のそういった感覚に今回アンテナが反応したのならそれはとても嬉しい発見だ。
前に観た映画『鑑定士と顔のない依頼人』では高価な肖像画に囲まれて暮らす主人公が登場する(この主人公もかなり気難しそうなおじさんだ)。彼のように肖像画ばかりに囲まれる暮らしは想像出来ないけれど、少しぐらいなら良さそうだと思い始めている。