Mar 8, 2019

5 happy men


目が合った瞬間に「桔梗屋だ」と思った。そう、一休さんに登場するあの意地悪な桔梗屋である。今年最初に訪れた骨董市で、恭しく頭を下げている割に不敵な笑みを浮かべ、ガラスケースの上に鎮座していた彼を見つけた時、その名前が頭に浮かんだ。見覚えのあるシルエットと福の紋で福助だとは分かるのだが、これまで見てきた福助とは少々異なる。年代や詳しいことは不明なこの福助氏、表情とは裏腹に哀愁漂う後ろ姿が特に気に入っている。



随分前、最初の福助を求めた時に「昔の福助ほど可愛くない、近年になるほど可愛らしくなる」と教わって以来少しずつ集めているけれど、集めれば集めるほど表情に大きな差があることに気づく。




記念すべき最初の福助がこちらの方。多くの人に撫でられたのか、すっかり頭部は剥がれていて決して状態の良いものではないけれど、穏やかな表情とすすけた顔にシンパシーを感じて連れて帰ってきた、明治のもの。


おちょぼ口で全体的に可愛らしくなっている彼は昭和のもの。目元には赤いラインが入っているおかげでおじさんというよりおばさん風。我が家にいる福助の中で福紋がどこにも入っていないのは今のところ彼だけだ。


こちらも昭和のもの、更に表情はデフォルメされ目はよりパッチリと福耳も最大級になっている。光沢もあり血色の良さそうな彼は貯金箱になっているもので、昭和でも30年代ぐらいの最近のもの。



この方も最近のものと思われる拝み福助。後ろから見るともはや丸っこい物体の何かにしか見えないのが面白い。正面できちんと揃えた両手がキュートだ。



こうやって一堂に会すると「桔梗屋」が一番小さいくせにやたら堂々としていて、しかも彼だけ裃が赤色で特別感がある。こうなると桔梗屋というよりご老中のと呼ぶ方が相応しい気が・・・。

福助といえばビートルズのアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」に登場している姿も堂々としたものだ(確か彼の前には白雪姫の人形がいる)。有名な人々に囲まれながら恭しく頭を下げている福助氏ではあるが、その彼も実は不敵な笑みを浮かべている事を見逃してはならない。