Oct 26, 2014

Česko

この1週間、愛用品と愛読書が偶然にもチェコのものであった。


愛用品はチェコ軍のパジャマシャツで、
11月を目前にしても陽射しが強い毎日、
上に下に重ねられるので重宝している。
襟裏のナンバリングも良い感じ。


パジャマだけに肌への当たりが考慮され、
チェコ特有の糸ボタンが使われているのもニクいところ。


糸ボタン以外にもガラスボタン等、チェコのボタン界は深くて広い・・・。


一方愛読書は、いとうせいこう氏の影響による
カレル・チャペックの『園芸家の十二ヶ月』の新訳本。
(訳:栗栖茜 海山社)



85年前も今と同じく園芸家はホースと格闘し
天気に一喜一憂していた様子はとても微笑ましく、
チェコも日本同様に四季があるので違和感無く読み進められる。

装丁は和田誠、挿絵はチャペックの兄ヨゼフ・チャペックによるもので、
読むのも見るのも楽しい一冊。



本によると10月は春が始まる月であり、植え付けと植え替えの月らしい。

さて、何を植えましょうか。


Oct 5, 2014

Babaghuri




Babaghuri  と名づけられた美しい石の本は2005年に清澄白河にある
ババグーリ本店で開かれた展示会の際に製作されたもの。



展示会ではこれらの美しい石がショーケースに並べられ、
会場にて手渡される虫めがねで見るという形式。

石を前に来場者それぞれがファーブルよろしく頭を上げ下げしなが
眼をこらして見る様子はなんとも楽しくて、今も鮮明に覚えている
展示会の一つである。



この本に寄せられたヨーガン・レール氏の一文がとても好きで、
氏の創造するものを見るたびにいつも思い出す。


ヨーガン・レール著 Babaghuriより抜粋

「これまで私は石を見つけ、石を愛でるために様々な場所を訪れてきた。だがどの場所も石もラタンプールとは比べものにならない。とは言えすべての場所がそれぞれ異なっており、どこへ行っても新たな種類の美に出会う歓びで有頂天になる。もっとも、その度に穏やかならぬ思い、自分を卑下したくなる思いが私の胸をよぎる。その思いとは        どうすれば新たなものが創造できるというのか、どうやってデッサンしたりデザインすればいいのか、私たちが何をしようが、いたるところの天然自然の中に存在する完璧さと美しさにはかないっこないのに。
ヨーガン・レール」



その厳しくも真摯な姿勢をずっと忘れずにいたいと思います。


Sep 20, 2014

Binding

古い雑誌、今回は日本のものを。



財団法人 郵政弘済社が発行していた「ゆうびん」という雑誌、
これは昭和28年(1953年)の1月号から12月号までが
個人によりまとめられた特別装丁版。



わざわざ自作で製本した元の持ち主はとても几帳面な方だったようで、
手間のかかる糸かがりの仕様に加え、表裏の表紙には柿渋らしきものまで
塗って仕上げるという手の凝りよう。
達筆な筆運びで書かれた名前と題字を見るだけでも
その人となりが伝わってくるようである。

雑誌の内容はというと、世界の郵便にまつわることから
当時の時事ネタまでと幅広く、これまたとても読み応えがある。





たとえば「コーヒーの花咲く国」と題されたブラジル特集は
切手と共にコルコバードのキリスト像の写真も掲載され、
ブラジル事情、コーヒーの歴史、趣味のコーヒー、
とページもようやく普及したコーヒーを中心に構成されている
(とはいえ豆をつぶす道具がスパイスグラインダーにしか見えないが…)



どの号も手描きのデザインやイラストがいきいきとしていて、
特にカットと呼ばれる小さな挿絵はバラエティに富み一冊で
様々な作風のものを見ることができる。
読者による記事やイラストの投稿も多く、
(中には学生時代の横尾忠則氏と思われるイラストも)
隅から隅まで飽きることなく堪能できる。


楽しく読み進めるほどに、自作で製本してしまうその気持ちが
とても良く理解できるのです。


Aug 31, 2014

September

初めて目にしたこれ、引札(ひきふだ)というものだそう。







引札とはいわゆるチラシ広告のことで、
どうやら中央に配されたのがその広告主の店名。
この場合は田中平(?)七商店といったところだろうか・・・。

興味深いのは新暦と旧暦が左右に分かれて印刷されており、
二十四節気や日曜表も掲載されている点。
旧暦から新暦に移行されたのは1872年だが、明治34年(1901年)の
引札にも旧暦が使用されているので、新暦が浸透するのに
かなりの時間がかかった事がうかがえる。



暦は1年を通して目に付くところに掲示されるので、
刷られた店名もおのずと目にすることとなる。
現代でもカレンダーは広告手段として使われており、
その原型が引札だったと思うとなんだか感慨深い。

外周部分にも意匠が施され、細かいところまで見どころは満載。

今よりも暦が生活に密接していた当時を想像すると、
明日から長月をむかえる背筋も引き締まるというものです。

Aug 6, 2014

Blue and Red

見慣れたものでも色が違うだけで、
別のものに見える時がある。

京都にあるファストフード店の控えめなロゴや
ルパン3世の白いジャケット姿などを目にすると、
認識して脳に伝達するまでに少々時間がかかる。


これもまた同じで、青色も赤色もグラスの色としては
珍しくないが、DURALEXとなるととても新鮮であり
同時に不思議な感覚になる。

クリアーから受ける印象とは少々異なる、とても強い色。
なので今でも棚から出すたびにしげしげと眺めてしまう。

そんな青と赤のDURALEXたちは、
夏になると自然と手に取る機会が増える。


この強い色、夏の日射しにも負けない気がするのです。

Jul 21, 2014

Dieter Rams

夏になると頻繁に登場する図録がある。

2008年に開催された
「純粋なる形象 ディーター・ラムスの時代
ー機能主義デザイン再考」の図録。

「Less but better」と「良いデザインの10ヶ条」
の精神に基づいてデザインされた美しいプロダクトを眺めると、
不思議と暑さを忘れる。


T 3  ポケット・トランジスタラジオ
1958年


atelier 1  ラジオ・レコードプレーヤー複合機
L 1  スピーカー
1957年


L 2  スピーカー
1958年



RT 20  中超短波ラジオ
1961年



T 52  ポータブル中長超短波ラジオ
1961年


更にはこれらのデザインの秩序がこちらの頭の中にも
リンクして、余分なものが排除され思考も整理される
という効能もある(あくまで個人の感想です)。

にしても、実はこの図録は800頁をこえるボリュームで、
興味深い寄稿やスケッチも掲載されているがゆえに
一度開くとなかなか閉じることはできない。




暑さだけでなく時間も忘れてしまうキケンな図録です。


Jul 6, 2014

Chapati

上から見るとラケットのようにも見える物体。
表面は木を継いであったり、刃物の跡も見られる。
更にまん中は磨り減って少々くぼんでいたりと、
使い込まれた形跡がうかがえる。



この謎の物体、正体はチャパティをこねる台で、
インドからはるばるやってきたもの。
そう言われると大きさも約30cmとまさにチャパティのサイズ。

今のところチャパティ用には使えていないが、
それ以外の場面で大活躍している。
食卓の中央に陣取り、時にはチーズやパンを切る台として、
またある時は土鍋、鉄鍋をしっかりと支えてくれる。

果物を載せているだけでも味わいがあって、
不思議な魅力と許容量を兼ね備えている。


 
一番の魅力は横から見た姿。
土台がちょうどカメの足のようでもあり、
頭を低くして寡黙に佇ずむその様子は、
まるで食卓の守り神の如し、なのです。